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謎のスカイラインGT-R Gr.A仕様



BNR32型スカイラインGT-R。90年のデビュー以来、その圧倒的な性能でJTCの頂点に君臨して無敵の進撃を続けたのは本ブログで語るまでもない。だがマシン的には謎な部分もあり、10台ほどある現存車には元の仕様とは異なるレプリカも存在する。今回モーターファンフェスタ2017に展示されていた車は、その中でも特異な1台と言える。
某ショップが持っているGr.A仕様のBNR32型スカイライン。カラーリングは90年にデビューしたカルソニックのものだが、実際にレースで使われた車ではない。よく観察してみると、外観的な特徴としては以下の点が異なっている。

1.フロントバンパー左側から生える牽引フック
2.ボンネットピンの間隔が他のGr.A仕様より広がっている
3.市販型と同形状のドアミラー(プライベーターには市販型を装備した車もあったが)
4.シルバーの5本スポークホイール
5.エアジャッキの接続口が無い(エアジャッキ自体は車体に装備されている)
6.Gr.Aとは微妙に異なる組み方のロールケージ


Gr.A仕様のR32は量産車の開発と平行して進められており、追浜工場でのテストカーの製作とテストを行い、その後ホシノレーシングとハセミモータースポーツのそれぞれが(おそらくニスモと共同で)マシンを製作し90年シーズンに投入。91年からはニスモでコンプリートカーの製作と部品の市販によりカスタマーへの提供が開始されたという流れになっている。ではこの車はどうなのかと照らし合わせてみると、普通のGr.Aではないことが分かるのである。




追浜工場で製作されたテストカーの1号車と2号車。両者はミラー形状と牽引フックの位置に違いがある。また給油口がリアフェンダーに備わっているのも後のGr.A仕様と全く異なる。1号車(銀/紺)のホイールは後のGr.Aとは微妙に異なる。2号車(リーボック風)は90年カルソニックと同じメッシュである。製作時期は実際の市販車と同じ形態を製作する「工場試作車」と言われるものと平行していたらしい。中でもまだ車体番号の打刻が無く、テストで問題点を洗い出して最後は解体する、一次試作車とされるものと同じようだ。日産のHPにある写真を見ると、この2台に車体番号はないことが分かる。試作車のラインからモノコックを抜き取って製作したのだろう。外観的特徴の1・3・4を見ると、追浜工場で製作されたGr.Aテストカーと見事に特徴が一致する。ではこの車は追浜工場製なのか?
個人的には違うと思っている。確かにフックとホイールは1号車と瓜二つだが、2が異なっている。




6.は重要な特徴である。Gr.Aのホモロゲーションを取得したロールケージは2種類あり、実際に使用されたのは1種類のみであった。だがこの車のロールケージは実戦で使われたものと微妙に異なっている。車体右側Bピラー付近から2本のパイプが床に向かって延びるのがGr.A仕様だが、この車はそれに加えて左側のBピラーからも1本が延びて手前の1本と交差して溶接されて右の床に向かっている。通常のタイプより強度がありそうだ。





90年の雑誌を漁っていた所、呆気なくこの車の正体が判明した。ニスモの広告である。6本スポークのホイールを履く市販型もいわくがありそうなのだがここでは割愛。カルソニックカラーのGr.Aだが、よく見ればフックとボンネットピン位置やロールバーが同一である。




同じく90年の雑誌記事。90年デビューとあることから、シーズン開幕前には既にカルソニックカラーに塗られていたようだ。リアフェンダーに注目してもらいたいのだが、給油口が追浜テストカーと同様に存在している。キルスイッチ周りは円形に凹んでいた追浜テストカーとは異なる。




現車をよく確認すると、リアフェンダーには給油口を埋めた痕跡がある。

またこちらのブログにて掲載されているゼクセルスカイラインが、このショーカーである事も判明した。

http://minkara.carview.co.jp/userid/698817/blog/34937745/

ロールバーがクロスする形態のGr.Aはこのテストカーだけのはずである。ボンネットピンの位置も一致する。この車は90年はカルソニックカラーだった後、92年はスパ24H参戦車のショーカーにされてしまったらしい。91年にスパで優勝した個体は92年も参戦したのだが、レース中の火災によって喪失してしまった。車が無い事からショーカーを塗り替えて仕立て、同時にドアミラーの交換や給油口の埋め込みも行ったと思われる。ずいぶんと手の込んだ改造である。その後いつからかは不明だが、再びカルソニックカラーに戻されたようだ。ただし復元は完全ではなく、ミラーは市販型のままになっている。




ではこの車の製作時期はいつなのだろうか? 車体的な特徴と90年当時の仕様から考えると、追浜でテストカーが製作されていた時期と近いのではないだろうか。追浜製テストカーは3台存在するが3号車はニスモ製コンプリートカーと全く同一の形態であり、1号車2号車とは異なっている。リアフェンダーに給油口がある点と、フロントの牽引フックの位置、ミラー形状からすると1号車と2号車の中間のような形態をしていることから、2台の間なのではないだろうかと自分は推測した。
ここで種の一つを明かしてしまうのだが、このカルソニックカラーの車の車体番号はBNR32-00003X(末尾一桁不明)というひじょうに若い番号を持っている。BNR32の車体番号は000051が市販1号車ということになっており、それ以前の50台は生産ラインを動かして実際に市販車と同じ車を作る工場試作車の最後の部分、二次試作車とされる分類になる。つまりこの車は車体番号はあるのだが、一般には販売されない車なのである。とはいえ一応の出自は市販型ということがわかる。
他にこれまでの考察以外に気になる点を画像で見ていく。




リアウィンドウにワイパーが無い。Gr.Aではこれが標準であるが、市販型でこの仕様はGT-RニスモとGT-R N1のみのはずである。ニスモが販売される前の工場試作車がニスモと同一の仕様を持っている点は興味深い。リアパーセルシェルフにはモケットが貼られる、丁寧な処理がなされている。これは初期の追浜テストカー以外では見られない。レースで使われたGr.A仕様では鉄板むき出しだった。




インパネ周りは個体差があるGr.A仕様なので具体的な違いはわからないが、センターコンソールに市販型のエアコン操作パネルが残っている点が特徴。もしGT-Rニスモがベースならエアコンはオプション装備になるので装備されないはず。三連メーターは置き換えられておりVDS製の油温計が左に装備、右側は不鮮明で判別不能だった。ワイパーのダイヤル右横には標準車ではリアワイパースイッチが備わるが、ニスモと同じくこの車はスイッチが無い。ただしGr.Aではオミットされるウォッシャーボタンはそのまま残されている。ステアリングはR31スカイラインのGr.Aが装備していたニスモ製と同じようだ。





メーターは大径のタコメーターが備わり市販型とは異なる。左にはニスモの油圧計、右にはブースト計が取り付けられている。一番右側は水温計と思われる。デジタル時計は蓋がされて右側に何らかの赤いスイッチが追加されている。





シフトブーツも市販型のものが残されているが、シフトノブはインパル製に交換されている。ECUはGr.A仕様はREINIK(日産工機)のステッカーが貼られるようだが、この車には無い。また「Gr.Aテストカー」と表示が貼られている。オーナーいわく「試作のエンジンが載っている」。何の試作なのかまでは聞けなかったが、日産工機が製作したものではないらしい。ドアトリムにはGr.A仕様は手回しのレギュレータが後付けで装備されるが、この車には無い。つまりパワーウィンドウのままということだ。




キルスイッチらしきものがエアコン吹き出し口に装備されているが、市販車のキーシリンダーも残されている。ラジオのチューニングボタンも残されているなど、ダッシュボード自体は市販型にかなり近い。




5本スポークのホイールは追浜1号車が主に履いていた物と同形状である。テストカーが所在不明な現状では、唯一ディティールを知ることができる貴重な品だ。後のGr.A仕様の標準的なホイールとはリベットやスポーク形状などが異なる。




トランク下にはオイルクーラーが4連装で備わる。他のGr.Aも似たような形態らしいが、標準仕様が不明確なのでどこが具体的にどう違うかまではわからなかった。またこの色を見ての通り、元の色は白である。モノコックから製作した本物のカルソニック・スカイラインは床も全て青で塗られる。




耐久用のテストカーという話も聞いたが、具体的にどんな内容のテストカーなのかはわからなかった。だがこの車が普通ではない生い立ちをしていることは間違いない。


と、結論に至ったと思ったら偶然にも最終的な回答を発見してしまった。レーシングオンアーカイブスVol.6「レーシング・スカイライン」のP66及びP132に載っていたGr.Aテストカーがそれである。




89年の撮影かつ白一色で一見すると追浜製3号車か、あるいはデリバリー前のニスモ製コンプリートカーのような雰囲気にも思えるが、よく見るとヘッドライトはプロジェクターランプでない、いわゆる角目と呼ばれる下位グレードが装備するタイプである。BNR32でこれを装備していたのは競技ベース車のGT-R N1のみだが、89年にこの仕様は存在していない。他にもバンパー左右のインテークは加工されてスリットが増えている点も独特だ。リアフェンダーには給油口があり、フロントフェンダーのキルスイッチ周りのディティールも追浜製2号車までと共通の仕様になっている。ホイールも追浜1号車と同様の、初期の5本スポークタイプ。車内に目を向ければ、ロールバーは手前のパイプがX字にクロスして溶接される独自の仕様である。これは現存する本記事の車と特徴が一致する。

この車の正体は何なのだろうか。レーシングオンの記事を見るに、89年から耐久レースをターゲットに製作されてテストが行われていたというように取れる。実際スパ用のテストカーも製作されているが、その車はGr.A仕様のカタログにも使われた赤い車であった。ただしよく見てみると、赤いテストカーもヘッドライトは角目が装備されている。91年シーズン用にニスモが製作したGr.A仕様のタイサンGT-RもHKS GT-Rも、ヘッドライトはプロジェクタータイプであった。夜間走行に備えて暗いプロジェクターから少しでも明るい角目に変更したようにも思える(結局スパ24Hを走ったGr.Aはプロジェクタータイプであったが)。他にも気になる点はある。追浜製テストカーに似た車体のこの車だが、追浜テストカーでは貼られていなかったニスモのステッカーがリアスポイラーに貼られている。またGT-Rニスモのエアロパーツは、バンパーのインテークのみである。
ここからは推測になるが、この車は元々、GT-Rニスモの仕様を検証するために製作された工場試作車なのではないだろうか。標準車でありながらリアワイパーがないのはおかしい上、ニスモでは省略されたエアコンが装備されたままになっている。この試作車を様々なGr.Aのパーツを評価するためにニスモで改修し、さらにそれを耐久レースのテストカーに転用したのではないだろうか。当初は追浜で製作されたGr.A仕様だが、マシンの製作や部品を販売するニスモ側でもマシン製作のノウハウは必要になるはずだし、実際に90年のカルソニックとリーボックのマシンは各チームとニスモが共同で製作したようだ。実戦用マシンの習作として、追浜1号車の仕様を参考にニスモで1台Gr.Aを製作してパーツのテストを行ったと自分は推測する。ロールバーはGr.Aの公認部品と形状が似ているがパイプが1本多く、実戦では使われていない。
GT-Rニスモのエアロパーツが装備されていない点も不可思議だ。バンパー左右のエアダクトも、GT-Rニスモ用に検討されていたものなのかもしれない。Gr.Aの仕様決定でこの車も不要になり(ホモロゲ部品でないロールケージではレースに出場することはできないはず)、バンパーやライトを市販タイプに交換して、ニスモ用のエアロパーツを装着してカルソニックスカイラインのショーカーに仕立てたのではないだろうか。ニスモの広告に出ていたのも、そもそもこの車がホシノレーシングのカルソニック・スカイラインではなく、ニスモが所有していたからだと思われる。




追浜1号車と同じフック位置のバンパーはもしかしたら、追浜1号車の部品そのものなのかもしれない。追浜製テストカーの所在は現在不明である(1号車ボンネットのみイベントで販売された)……。
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  1. 2017/09/21(木) 00:26:44|
  2. その他マシン
  3. | コメント:7
<<スカイラインGT-R Gr.A仕様・初期テストカーの考察 | ホーム | モーターファンフェスタ2017>>

コメント

リサーチお疲れ様デス。
飛行機では、増加試作機をメーカーがテスト機として手元に置き…派手に塗り替えてデモ機として輸出キャンペーンに使ったり~魔改造してコンペに参加したりしてますね。F-15試作機の複座型がストライクイーグルの試作機に。F-16量産試作機がF-16XLデルタ翼機に魔改造されましたね…
三栄からマツダ787のムック本が出ましたね…このラインでツーリングカー本も出してくれますかね?いまだにモデルカーでは定番アイテムですので、需要はあるはず?
青島のBT52…チマチマ作ってます!他と全く異なるフォルムは…やっぱり目立ちますね!
あとプラモになって無いチャンピオン車は…タイレル006とウィリアムズ08くらいかな…ちと厳しい?BT49は…なんとか出来ちゃうし?
ブラバムレプコは…キツいですかね(^_^;)
  1. 2017/09/21(木) 11:11:50 |
  2. URL |
  3. 1418gr5 #ZdfQhLTQ
  4. [ 編集 ]

更新お疲れ様です(´▽`)

随分と変遷を経ているようで、素性がはっきりしない車ですね。記事を読んでいたら、頭がつかれました。

5本スポークのGTRを見慣れているせいか、6本スポークのホイールに違和感を感じました。
  1. 2017/09/23(土) 20:27:26 |
  2. URL |
  3. ぽこぽこ #-
  4. [ 編集 ]

毎度の詳細な考察恐れ入ります
守備範囲広いっすなぁ・・・
ラリーもツーリングカーもGr.A最高と思うオッサンでした
でもツーリングカーに関してはクラス1よかクラス3の方が好きですね
  1. 2017/09/23(土) 21:22:10 |
  2. URL |
  3. 乙tus107 #-
  4. [ 編集 ]

GT-Rマガジンにこの車と今まで公になっていなかった
カルソニックスカイラインの1台が掲載されていましたね。
内容的には自分の考察とだいたい同じだったので
目新しいものはなかったですが。
それとテストカーの製作順ですが、
リーボック風→銀/紺→白
の順番のようで。
その辺の修正も踏まえて追加の記事を投稿予定です。
  1. 2017/10/21(土) 07:54:16 |
  2. URL |
  3. Bou_CK #Y17400wE
  4. [ 編集 ]

1418gr5さん

最近調べてるんですが、市販車の試作車って基本は廃棄するんですよね、
ところが日産ってその辺が面白くて、座間にいっぱい残ってたようです。
この車も当時関係者に流れたという1台でした。

>787B
001の写真だけでも買いだと思いますよ!
あとは各地にあるレプリカも気になりだした昨今笑
ツーリングカーは有名どころなら何とか出せるかもしれませんが…。
  1. 2017/10/21(土) 08:37:53 |
  2. URL |
  3. Bou_CK #Y17400wE
  4. [ 編集 ]

ぽこぽこさん

当時の資料が少ないので実情が掴みにくいです。

>6本スポーク
確かニスモのホイールですが、この車も試作車か
何かと言う話を聞いたような覚えがあります。
  1. 2017/10/21(土) 08:39:47 |
  2. URL |
  3. Bou_CK #Y17400wE
  4. [ 編集 ]

乙tus107さん

最初はR91CP調べてたんですけどねえ…いつの間にかR32に。

>クラス3
シビックのボディが薄い鉄板で作ったスペシャルで、
走行中に屋根が凹んだという話があるらしく笑いました笑
  1. 2017/10/21(土) 08:41:59 |
  2. URL |
  3. Bou_CK #Y17400wE
  4. [ 編集 ]

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