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スカイラインGT-R Gr.A仕様・初期テストカーの考察

前回の記事で残された資料からの推測で謎のカルソニックスカイラインの正体に迫ってみたが、いくつか誤った部分があるので訂正をしつつ追記を加えることとする。資料として購入したSKYLINE GT-Rという当時の写真集的な本と、スカイラインGT-R レース仕様車の開発という本がとても参考になった。

まず前回記事での誤った点を列する。

・カラーリングは90年にデビューしたカルソニックのものだが→×
 正確にはこの車の現在のカラーリングは93年仕様となっている。

・追浜テストカーの1号車(銀/紺)と2号車(リーボック風)→×
 後述するがどうやらリーボック風が1号車、銀/紺が2号車で逆のようである。

・BNR32の車体番号は000051が市販1号車→?
 通説ではこのようだが、実際には000051以後も謎の車や広報車があり、実際の市販は000100あたりからのように思われる(中期型のGTS25などは実際そうなっている)。

・デジタル時計は蓋がされて右側に何らかの赤いスイッチが追加されている。
 →赤いダイヤルはブレーキバランス調整用らしい。Gr.A実戦仕様はステアリング右に装備される。

・またこの色を見ての通り、元の色は白である。→?
 この車は一度ゼクセルスカイラインのレプリカにされてしまった経歴があり、初期テストカーは白だがこの車体下面の白が当時の色かはわからない。

・耐久用のテストカー→×
 耐久レースをターゲットにした開発はGr.Aカタログ車の赤いマシンが1号車で、初期のテストから耐久レースを主眼に置いた開発がなされたという記述は本に無かった。ただしエンジンマウントに関しては赤い車にフィードバックされた可能性もあるので、パーツのテスト程度はしていたのかもしれない。

・追浜1号車と同じフック位置のバンパーはもしかしたら、追浜1号車の部品そのものなのかもしれない→?
 後述するが1号車ではなく2号車である。またフックだがショーカーとしての製作時期を考えると、テストカーの製作と同時期にパーツをもう1台分作り、それを用いてテストカー専用のバンパーと角目の組み合わせから、一般的な市販型の顔に整形したと考えるのが自然か。


以上を踏まえて、下記が自分の最新の考察である。

■実物大モックアップ



BNR32型GT-RのGr.A仕様の開発は市販車の開発と同時並行で進められていたことは既に述べたが、この開発において実際に車両が製作されたの最も初期の車は、R32型スカイラインが発売された89年5月から6月にかけてのものである。この車の特徴は車体の塗装が白一色で、GTS以下のグレードが装備する標準タイプのヘッドランプ(通称角目)を装着している。




角目の装着とサイドシルプロテクター未装備はBNR32開発において、初期の実物大モックアップで検証されていた仕様と同一である。またバンパーも8月から販売されたGT-Rの物と異なり、両側のインテークには2段のフィンが切られる独特な形状をしている。リップスポイラーにもダクトはあるが、市販型では中央にあるフィンが無いようだ。市販型のモックアップ段階ではダクトが無いこと、NISMO仕様の開発に伴ってダクト開口を決定したような記述が本にあることから、この段階でのテストがNISMO仕様のエアロにある程度寄与したのかもしれない。まだレース用のベースグレードの検討をしていた段階でもあり、場合によってはこの外観の車がGT-R NISMOとして発売されていたのかもしれない。





GT-R レース仕様車の開発の記述では、「グループA用ボディは開発初期に2台製作した。1号車はモックアップとし、部品のレイアウト検討に用いた。2号車は実験車とし、ロールケージを組み込んで剛性の測定を行った(以下略」とある。この初期車が画像の車であろう。1号車は試験中の工場試作車から1台を抜き取り、Gr.A用の部品の配置などを検討する実物大モックアップとしたと思われる。マシンを短期間で製作するためレース現場のメカニックらも製作に携わったという。ロールケージはGr.A仕様の決定がなされる前なので、パイプが1本多いX字型にクロスしたタイプを装着したようだ。このタイプは整備性があまりよろしくなさそうである。モックアップとは言うが現存する実車は自走可能であり、エンジンやパーツのテストにも使用されたと思われる。




この車はその後はテストに使用されなかった。モックアップということで車体の強度はおそらく2号車より低かったはずであるし、何よりX字型にクロスしたロールケージでは実戦車と同一の仕様でテストするのに望ましくない。だがレース仕様に近い仕様であったためか、89年の東京モーターショーで展示する目的でカルソニック・スカイラインのショーカーに改装されてしまった模様である。外観的にはヘッドライトをプロジェクタータイプに交換し、バンパーを043号車と同じフックが備わるニスモ仕様の物に交換した。フェンダーも交換したらしく、消火器とキルスイッチは実戦車と同じくフェンダーから直に生えるようになっている。また車内も白からカルソニックの青に塗り直されている。ニスモの広告にもこの車は使用された。




その後ゼクセルスカイラインのレプリカを経た後、この車は93年頃に再びカルソニックカラーに変更されて現在に至っている。GTバッジやGTRのエンブレムが無いのは93年仕様に準じたためと思われる。




この車は既に完成していた工場試作車を改造したためか、後の市販型と異なるディティールがいくつか内装で見受けられる。一つはエアコンの吹き出し口の形状である。GT-Rマガジンやこの車の車内を撮影した他のブログの方が画像が鮮明なので詳細なディティールはそちらを参照されたい。市販型は風量を調節するダイヤルが吹き出し口横に備わるが、オートエアコン装備でこのような機構は不要と設計者が考えたのか、試作車はダイヤルが無いため風量の調節やエアの吹き出しをカットできない。また吹き出し口全体が動いて上下風向を調整するようになっており、一般的なフィンのみが可動する市販型の吹き出し口とは機構が全く異なる物である。




もう一つはウィンカーレバーである。試作車は先端が丸まって太くなる形状をしており、市販型とは異なっている。BNR32は販売開始までにおそらく100台程度の試作車が作られて試験を行っているが、そのほとんどが廃棄されているためこの車は試作車の現存例としてかなり貴重なものであると言える。


■“023号車”




89年の6/1にシェイクダウンすることを目標に製作されたのが、実験車とされる2号車と思われる。1号モックアップとの違いはGr.A仕様と同形状のロールケージ、フェンダーのGTバッジの省略、ホイールのスポークが白いことである。車内を見ると、助手席側ロールケージ部に補強らしい板が装備されている。リップスポイラーも1号車は側面にアルミか何かの板で補強して取りつけていたが、この車には無い。基本的な外観はモックアップと変わらず、角目+専用バンパー、サイドシルプロテクター無しの質素なスタイルをしている。バンパー中央エアインテーク上部左右にはモックアップと同じくニスモダクトがあるが、テープで塞いでいるようだ。テスト中のスタッフからの呼称は“023号車”であった。023となっている理由は明かされていないが、ニュルに持ち込まれた工場試作車が044号車と呼ばれていたことから、おそらく23番目に作られた試作車なのだろう。




その後023号車はGr.Aのレース仕様決定に伴い、フロント周りを中心に手を加えて引き続きテストに使用されることとなった。ヘッドライトは市販されたGT-Rと同じく、プロジェクターランプ仕様に交換されている。市販車イメージを重視して、市販型に無い角目の装備を止めたと考えられる。とはいえ後にN1仕様で角目に回帰してしまうのは面白い点であるが。バンパーはGT-R NISMOと同じ市販タイプになったが、牽引フックの位置はそのままになっている。これは後のレース仕様に比べて若干高い位置である。やはり市販車イメージを重視したためか、ボンネットのSバッジと共にフェンダーにはGTバッジが追加されているが、フェンダーはモックアップと交換した可能性もありそうだ。エンジンルームの画像が日産のWEBサイトで見られるが、後述の043とはバルクヘッド付近の補強パイプのレイアウトなどが異なっていることが分かる。カラーリングはリーボックスカイライン風のストライプを配したが、サイドシルプロテクターが無い点や、リップスポイラー下のブレーキ用ダクトなど異なる点も多い。車体番号の打刻は日産の画像から見たところ存在しなさそうである。




エンジンは日産工機がチューニングしたものを搭載していた。燃料タンクはR31 Gr.Aの仕様を引き継いでおり、トランク床面の車体下部に装着された。しかしこれは燃料タンクが横に広がり、また路面に近いことからレース中の損傷による事故を懸念して新たな仕様を開発することとなった。




給油口がフェンダーにあるテストカーを捉えた貴重な写真である。見ての通り床下にタンクを配置するため、トランク内部は消火器などが置かれているようだ。燃料ポンプはスペアタイヤの凹みに配置され、ある意味合理的な配置になっている。左側キャッチの内側にはエアジャッキのチャックが飛び出しているが、SKYLINEのSの字にかかっており美観はよろしくない。またよく見てみると、リアパーセルシェルフには市販型のトリムがそのまま残され、スピーカーのカバーも存在している。ただし形状はBNR32市販型のアクティブスピーカーシステムの物ではなく、下位グレードの標準的なタイプらしい。023号車も既に完成していた試作車から一度内装などを取り払い、レース用部品を組み付けて製作されたものと思われる。ただし内装部品の形状は市販型と同じなので、工場試作車でも市販型に近い段階の車をベースにしたのだろう。


re_テストカー023号車

その後043号車の完成に伴い、023号車はさらに外観に手が加えられた。サイドシルプロテクターが装着され、GT-R NISMO仕様のエアロとなった。ただしパーツは未塗装である。リップスポイラーもダクトを使用しないことが決まったためか、未塗装の標準品に交換されている。ホイールもカルソニックなどが使用することになるBBS製のメッシュホイールに交換された。日産のWEBサイトの画像を見ると、相変わらずリアのスピーカーとトリムは残されているが、燃料タンクはトランク内に移設された模様である。


■“043号車”

re_テストカー043号車

5/22の市販車の発表に合わせてお披露目する目的で急ぎ製作されたのが、この2台目のテストカー、通称“043号車”である。一般的にはGr.Aテストカーとして最も知名度が高い個体であろう。この車は023号車と平行して製作されていたらしく、5/22のローンチでは新型燃料タンクの製作が間に合わなかったため、市販型の燃料タンクを装着していた。またエアジャッキのチャックは市販車でのフューエルリッド内に設置されている。外観的にはレース用ではなく市販型のサイドミラーを装着している点が特徴である。エアロパーツはGT-R NISMOに準拠しており、サイドシル後部のエアロパーツも備え、レース仕様にかなり近付いた。ただし牽引フック位置は独特の左側インテーク付近から生える形態で、後のレース仕様とは明らかに異なっている。急遽製作されたため、ミラーなどが市販型のものを装備しているようだ。テスト中もこれは変わらなかった。

この後に追加で3号車が製作されたが、この車はエアジャッキのチャックがグリル内にあり、また牽引フックもリップスポイラー中央から出ているなど、ほぼGr.Aでの実戦型と同一の仕様となっていた。

以上が追浜工場製の初期テストカー3台である。そしてこれら3台の初期テストカーには共通の意匠がある。

・リアフェンダーの給油口




 当初燃料タンクは床下装備を想定したためか、給油口はフェンダー左右に開口された。仕様が決定されたGr.A用燃料タンクはトランクルーム内に設置されるもので、不都合があることからレース仕様ではトランクリッド上部に給油口は移設されたものと思われる。現存車はこれを埋めた痕跡があるが、おそらく燃料タンク自体はGr.A仕様と同じ物を装備していると思われる(この車は自走可能である)。

・エアジャッキのチャック

re_テストカー023号車_2

 レース仕様ではフロントグリル付近に装備されるエアジャッキのチャックだが、テストカーではリア側に配置されている。ただし023号車と043号車では位置が異なっている……。モックアップは不明だが、023号車の位置からするとモックアップも同じ位置だったのではないかと思われる。現存車はチャックが確認できない。フューエルリッド内にあるのか、それともショーカーにエアジャッキは不要とリアバンパーを交換してチャックを撤去してしまったのか。

・車外の消火器及びキルスイッチ



 右フロントフェンダーには消火器ボタンとキルスイッチの二つが装備されるが、初期テストカーではフェンダーを円形に切り抜いた上で、一段引っ込んだ位置に両者を配した。レース仕様は手間を嫌ったのかフェンダーから直に生えている。

・ブレーキバランス調整ダイヤル



 前後のブレーキバランスを調整する機構がGr.A仕様には備わっており、調整には赤いダイヤルを用いる。これはレース仕様ではステアリング右側にあるが、テストカーでは左側のデジタル時計を塞いだ右隣に設置されている。

・エアコン操作パネル



 モックアップと043号車の2台は確認できているが、エアコンの操作パネルが残存している。エアコンユニット自体は不要なので装備していないはずだが、コンソールに装備する物が無かったのか操作パネルが残されているのが特徴である。ただし043号車はパネルが3連メーターのあった最上部に移設されている。

・左ドアのパワーウィンドウ



 左ドアにはウィンドウレギュレータが無く、またパワーウィンドウ操作ボタンがあることからパワーウィンドウがそのまま残されているようだ。043号車はテスト中に左の窓を開けている写真も確認できる上、車内の画像ではレギュレータが存在しないことからも、この2台はパワーウィンドウが残されていると見て間違いない。

・バケットシート



 3台いずれも青いモケットのケーニッヒ製を装備する。Gr.Aカタログ車の赤い車はレカロ製であった。


これで件のカルソニックスカイラインがどのような正体・経歴なのかを把握できたと思う。現在はモックアップがカルソニックカラーのショーカーとなって現存しているが、023号車および043号車の行方は判明していない。043号車のボンネットがイベントで販売されていたことから、おそらく2台ともテスト後に廃棄処分されたものと思われる。
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  1. 2017/10/29(日) 18:12:24|
  2. その他マシン
  3. | コメント:2
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コメント

更新お疲れ様です
F1チャンピオン決定…なんと言いますか、盛り上がらなかったですな…衆議院選挙の方が盛り上がって(^_^;)
BMW635やジャガーXJRに連なる『長いエンジン積んだ箱車』の系列の最後期にあたる車ですよね…なんだかんだ言っても、よくぞ纏めた!と思います!一足早く同時期のBMWやフォードは四気筒に鞍替えしましたもんね…
ブラバム52プラモデル…前作のMcLarenMP-4/2同様に『B型しか残って無いので…プラモデルも基本B型。カウルとデカールのみ初期型』…みたいですね…まあ、ヘインズのBT52本見ながら…ナンとかナルかな(^_^;)
  1. 2017/11/04(土) 01:32:35 |
  2. URL |
  3. 1418gr5 #-
  4. [ 編集 ]

最近更新をサボり気味なBou_CKです。レーシングオンで名指しで言及されていたのには草生えた。

1418gr5さん

>BMW635やジャガーXJRに連なる『長いエンジン積んだ箱車』の系列の最後期にあたる車ですよね…なんだかんだ言っても、よくぞ纏めた!と思います!
そういえば直6のGr.AマシンってR32が最後でしょうか。というかツーリングカーの規定が変わっちゃったからあれか。

>ブラバム52プラモデル…前作のMcLarenMP-4/2同様に『B型しか残って無いので…プラモデルも基本B型。
残念すぎる…
  1. 2017/12/21(木) 23:25:50 |
  2. URL |
  3. Bou_CK #-
  4. [ 編集 ]

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